湿気の多い立地での対策、床下の換気

特別に湿気の多い立地での対策

 体育館は床面積が大きく梁間も広いので、特別に湿気の多い場所では敷地造成の段階から十分な配慮がほしい。フローリングが膨れ上った。張り替えをしたがそれも故障したといった事例から立地条件別に対策を表示してみるとつぎのようになる。特に新設の学校その他公共施設としての体育館は山際または山を切りとって造成された土地、埋立地に建てられることが多い。こうしたところは多湿による木材の材質変化が予想外に早く、常識では考えられない事例さえある。このような場所では敷地の排水、床下の防湿を第一に考えてほしい。トラブルの多くはこうしたところでおきている。

立  地  条  件 対  策
床構造 床土間 床組 その他
湿地 低地で排水の悪い所、地下水の高い所。
水田・池・水ためを埋め立てた地盤の悪いところ。
接地床はさけ組床とする。 防水層を設ける。
地盤の不同沈下によるクラックに注意。
木床組
(防腐)
鋼製床組
山腹切取
造成地
地下水が浸出する。
多湿で結露しやすい。
防水層を設ける。 地下水の伏流を防ぐ
(山際に側溝)
山間 昼夜の温度差が激しく多湿で結露しやすい。
高冷地 モヤ・露が多い、昼夜の温度差が激しく多湿で結露しやすい。 コンクリートの乾燥が悪いので、よく乾いてから床を張る。
多雨多雪
地方
多湿
隣接地に建物などがあって通気の悪い所。

主要都市における木材の含水率(%)の月別変動

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 較差
札 幌 17.2 17.2 15.6 △13.9 14.5 ○18.5 18.1 17.9 17.8 16.9 15.8 16.4 4.7
青 森 17.5 16.8 15.0 △13.9 14.4 16.4 ○17.3 16.7 16.4 15.4 15.1 16.7 3.4
山 形 19.4 18.3 16.3 13.3 △13.1 14.8 16.2 16.2 17.7 17.9 18.2 ○19.7 6.6
秋 田 17.2 16.4 15.4 △13.2 16.2 17.6 ○18.8 18.2 18.5 17.5 17.1 16.6 5.6
水 戸 12.8 △12.7 13.5 15.0 16.1 18.1 18.6 18.7 18.7 ○18.8 16.4 13.9 6.1
東 京 12.1 △11.6 12.4 14.1 14.7 16.7 ○17.4 16.6 16.7 16.1 14.6 12.8 5.8
新 潟 ○17.8 17.2 14.9 △14.8 14.9 17.2 17.1 16.1 16.1 15.7 16.0 16.8 3.0
名古屋 15.0 13.3 △13.0 13.5 14.0 15.4 15.6 15.6 ○16.7 15.9 15.6 15.0 3.7
金 沢 16.4 15.8 14.2 △14.0 14.8 16.0 ○16.7 15.7 16.3 16.1 15.6 16.2 2.7
京 都 16.1 15.0 14.3 14.0 △13.9 15.1 15.6 15.0 16.2 16.9 ○17.1 16.7 3.2
大 阪 13.3 △13.2 13.3 13.5 13.9 ○15.1 15.0 14.2 14.7 14.9 14.8 13.6 1.9
広 島 14.4 13.5 △13.4 13.5 13.9 15.5 ○15.6 14.5 15.0 14.4 14.7 14.5 2.2
松 本 13.9 △13.9 14.2 15.0 15.3 16.2 16.1 16.0 ○17.1 15.9 15.4 14.2 3.2
熊 本 15.6 14.9 △14.7 15.0 14.8 ○16.6 17.1 15.6 16.2 15.3 16.0 16.0 1.9
鹿児島 14.2 △13.8 13.9 15.0 15.0 ○17.5 17.0 16.1 15.7 14.2 14.7 14.8 3.7
福 岡 14.6 14.6 △14.5 15.3 15.6 16.6 16.5 16.9 ○17.6 16.6 15.5 14.5 3.1

○最大の月、△最少の月。較差は最大と最少との差
●農林水産省林業試験場編「世界の有用木材300種」より引用
●農林水産省林業試験場編「木材工業ハンドブック」より引用

体育館床施工について

体育館床施工について体育館としては、床の出来ばえが、その体育館の良否を決定づけるとまで言われております。

  • 床張りでは、従来の単層フローリング張りから・‥・<笠倉式特殊床工法>が、もっとも優れた施工法だと実証されてまいりました。
  • その他、充分な換気を施した床下であると同時に、適度の含水率を保った床材料であること。
  • 体育館フロアー面における仕上げは、ポリウレタン樹脂塗装が主です。
  • 仕上りのポイント……は
    1. プレー上、適度なすべり
    2. 木質を充分に生かしたシール剤
    3. 亀裂・剥離が起こらない樹脂塗料
    4. 耐磨耗性に優れ、美しく、プレーの妨げにならぬ光沢

床下の換気

床下の換気

V・・・・・・単位時間の換気量(m2/h)
WF・・・・・床下空気の絶対湿度(g/m2
Wo・・・・・換気口取入口付近の外気絶対湿度(g/m3
A・・・・・・床面積(m2
q・・・・・・地面単位面積から蒸発する水分量(g/m3

床組材としての木材をよい状態でいつまでも保存するための床下換気量は普通つぎの式で求められている。(日本木材加工協会・木材保存ハンドブック、1961)古い寺院や神社などで土台まわりを一段高くして通風を図りしかも床下を全くの吹き抜けあるいは囲りに格子を組んだだけの建物をよく見受けるが体育館のように床面積が大きく、しかもスパンの広い建物では床下の換気量を大きくするため古いお寺やお宮の床下のことを考え合すなどの配慮がほしい。

換気口の取付数と大きさ

建築基準法施行令では「外壁の床下部分には、璧の長さ5メートル以下ごとに300平方センチメートル以上の換気口を設けること」ときめられるがフローリングがふくれ上った事例のほとんどは、立地条件についての配慮が足りなかったり、床高が低く、しかも換気も口の大きさと取付数が足りないところでおきている。

立 地 条 件 壁 長 高 さ 個数 広さ(m2
普 通 5〜6m毎に
300m/m
1,800m/m
900m/m
1
2
0.54
湿気の多いところ 5〜6m毎に
400m/m
1,800m/m
900m/m
1
2
0.72
参考(住宅) 3m毎に 150m/m 300m/m 1 0.045
(注)この表は−寸見た限りではこんなに大きな換気口が必要なのかとさえ思われるが、床下の気積と換気口面積の関係を考えてみると、
換気口の取付数と大きさ

床下が多湿となる理由

床下の温度は外気温より低いため床下の湿気は土中に凝縮吸収される。然し夜半特に明けになって床下の地表温度より外気温の方が低くなってくると昼間土中に凝縮吸収されていた水分が蒸発を始める。けれどもその頃は気温が低く床下の湿気は既に飽和状態に達しており、そのため蒸発した水分は床裏や床組材に吸収され余った水分は結露する。このような現象はどこでも毎日繰り返されるわけで、前表で山あいや高冷地など昼夜の温度差の激しいところに湿気が特に多いといったのはこのためである。

床下の防湿設計例

(a)防湿コンクリート打
  防湿コンクリートの代りに床下全面に捨コンクリート50mm位を打ち、その上にビニールまた はポリエチレンシートを敷きつめモルタル30mm位でおさえる方法も行われている。
(b)ポリエチレンシート敷
  防湿コンクリートの代用として床下一面にビニールまたはポリエチレンシートを敷きつめモル タル・砂・小砂利でおきえた簡便な方法で効果をあげている例もある。

床のすべりの安全性

スポーツフロアのすベりは、使用者の安全性、快適性の観点で非常に重要な性能であり、すべりすぎても、すべらなすぎても不都合である。
いずれの競技種目においても、すべりの最適値が存在し床のすべりの評価を行うことができるようになっている。厳密には、使用目的によって、所定の性能を確保することが重要となるが、すべり抵抗値が0.5〜0.8の間に位置すれば安全性、快適性の観点から大きな問題はないといえる。
<参考>

(例)
すべりの最適値および許容範囲(例)(屋内体育館の場合)
文献出所:東京工業大学建築学科教授工学博士、小野英哲小野研究室の資料による。

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